アーカイブ: 源氏物語

土佐光信「少女」源氏物語絵アルバム第21帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

少女(おとめ)

少女子があたりと思へば夏草の
露のしげくもぬれにけるかな

冷泉帝の御代が始まり、源氏は太政大臣として栄華の頂点に立つ。嫡男・夕霧が元服し六位から大学寮へと進む一方、内大臣の娘・雲居雁との初恋は引き裂かれる。六条院の盛りと、若い男の苦労と涙とが交差する、笑ひと哀れが混じり合ふ一帖。

土佐光信「玉鬘」源氏物語絵アルバム第22帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

玉鬘(たまかずら)

たまかずら いかなる筋を尋ね来て
花橘に宿りそめけむ

亡き夕顔の遺児・玉鬘が九州の筑紫から上京し、初瀬参りの帰路に夕顔の旧侍女・右近と劇的な再会を果たす。源氏の六条院に引き取られた玉鬘。養父としての温かさと、それとは少し違ふ何かが、源氏の胸に芽生へ始める。

土佐光信「初音」源氏物語絵アルバム第23帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

初音(はつね)

年ふれど心はかへさぬ鶯の
旧巣忘れぬ声をきかせよ

六条院の正月。鶯の初音に寄せた歌が飛び交ひ、新春の晴れやかな気配に満ちる一帖。源氏は各御殿を回り、紫の上・花散里・明石の御方・秋好む中宮・玉鬘それぞれと歌を交はす。六条院の豊かな賑はひと、それぞれの女性の想ひが短い歌に光る。

土佐光信「胡蝶」源氏物語絵アルバム第24帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

胡蝶(こちょう)

春の野の胡蝶をさへや下草に
秋待つ虫はうとく見るらむ

六条院の春爛漫。紫の上の春の御殿から蝶に扮した童女の舟が池を渡り、秋好む中宮の御殿へ春の花を届ける。柏木をはじめ玉鬘への求婚者たちが増すなか、六条院の華やかさと、その裏で揺れる恋の季節が始まる。

土佐光信「蛍」源氏物語絵アルバム第25帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

蛍(ほたる)

蛍こそまだ見ぬ人の恋しけれ
よそに見えつる光かと思へば

蛍の光で玉鬘の美しさを垣間見せる名場面と、源氏自らが語る「物語論」が輝く第二十五帖。

土佐光信「常夏」源氏物語絵アルバム第26帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

常夏(とこなつ)

風吹けばまづぞ乱るる色かはる
浅茅が露の消えやすきかな

六条院の夏、玉鬘のもとへ男君たちの恋文が次々と届く。内大臣の粗野な娘・近江の君の騒々しさと玉鬘の気品とが対比され、光源氏もまた養女への密かな慕情に揺れる夏の一日が描かれる。

土佐光信「篝火」源氏物語絵アルバム第27帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

篝火(かがりび)

篝火に立ちそふ恋の煙こそ
世にしたがはぬほのほなりけれ

六条院の秋の夜、篝火を焚きながら源氏と玉鬘が語り合ふ。ほんの短い帖でありながら、火と煙のやうに制しきれぬ源氏の恋心が密やかに描かれる。源氏物語最短の帖。

土佐光信「野分」源氏物語絵アルバム第28帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

野分(のわき)

荻の葉に吹きすぎながら野分だに
しばしと止まるかたもなきかな

台風(野分)が六条院を吹き荒らす日、夕霧は庭を見回るうちに偶然、御簾越しに紫の上の姿を垣間見てしまふ。その圧倒的な美しさに心乱れた夕霧の目を通して、源氏の最愛の人の姿が描かれる。

土佐光信「行幸」源氏物語絵アルバム第29帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

行幸(みゆき)

難波潟みじかき蘆のふしの間も
逢はでこの世を過ぐしてよとや

冷泉帝の大原野行幸に際し、内大臣は玉鬘の輿入れを正式に打診される。源氏は玉鬘を手放すことを決意しつつ、最後の別れを惜しむ。やがて髭黒との縁組が静かに近づいてくる。

土佐光信「藤袴」源氏物語絵アルバム第30帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

藤袴(ふじばかま)

同じ野の露にやつるる藤袴
あはれはかけよかことばかりも

秋の野に咲く藤袴を贈りながら、夕霧・蛍宮らが玉鬘へ恋を訴へる。内大臣の子である柏木も加はり、実の父・兄弟との知らぬままの交流が続く。玉鬘の婿選びは佳境を迎へる。