アーカイブ: 源氏物語

桐壺(きりつぼ)

限りとて別れる道の悲しきに
いかまほしきは命なりけり

帝の深き御寵愛を受けながらも嫉妬の嵐に消えた桐壺更衣と、その遺した御子・光源氏の誕生を描く第一帖。すべての物語の源流であり、「もののあはれ」の心が宿る章。

土佐光信「帚木」源氏物語絵アルバム第2帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

帚木(ははきぎ)

帚木の心をしらでその原の
道にあやなくまどひぬるかな

雨夜に語られる「雨夜の品定め」、男たちが夜を徹して女性を論じ合ふ名場面。源氏の新たな恋の予兆が交差する第二帖。

土佐光信「空蝉」源氏物語絵アルバム第3帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

空蝉(うつせみ)

空蝉の身をかへてける木のもとに
なほ人がらのなつかしきかな

源氏の求愛を毅然と拒み、薄衣一枚を残して消えた空蝉。蝉の抜け殻のやうな儚さと誇りを描く第三帖。

源氏物語 夕顔 ─ 月岡芳年 画(1885年)

夕顔(ゆうがお)

心あてにそれかとぞ見る白露の
光そへたる夕顔の花

白い夕顔の花が縁となり始まった、名も身分も明かさぬ女人との儚い恋。廃院での一夜の後、突然の死によって断ち切られる、源氏物語の「はかなさ」の美学が結晶した一帖。

若紫 - 春の北山の情景

若紫(わかむらさき)

手に摘みていつしかも見む紫の
根にかよひける野辺の若草

光源氏が北山の寺で美しい少女(のちの紫の上)を見出し、その面影に亡き母や藤壺の宮を重ねて深く心惹かれる物語。春の北山を舞台に、源氏物語で最も重要な女性・紫の上が登場する名場面。

土佐光信「末摘花」源氏物語絵アルバム第6帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

末摘花(すえつむはな)

なつかしき色ともなしに何にこの
すゑつむ花を袖にふれけむ

赤鼻の不器量な姫・末摘花と源氏の奇妙な縁を描く第六帖。ユーモアと人間への深い優しさが光る、源氏物語の異色の名篇。

土佐光信「紅葉賀」源氏物語絵アルバム第7帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

紅葉賀(もみじのが)

いつとなく大内山のもみぢ葉は
神のまにまに散りぬべらなり

紅葉の宴で天人のごとく「青海波」を舞ふ源氏。しかしその胸には藤壺の宮との禁断の秘密が宿る。光と罪が交差する第七帖。

土佐光信「花宴」源氏物語絵アルバム第8帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

花宴(はなのえん)

朧月夜に似るものぞなき

春の花宴の夜、暗闇の中で運命の女性・朧月夜と出会ふ源氏。甘美でありながら、のちに大きな波紋を呼ぶ一夜の縁を描く第八帖。

源氏物語絵巻 - 葵(柏木図)

葵(あおい)

嘆きわび空に乱るるわが魂を 結びとどめよしたがひの褄

第九帖 葵 賀茂の祭の日、葵の上と六条御息所の車争ひは、まことに都中の語り草となりぬ。身分高き御息所の車が押しのけられし屈辱は、やがて怨みの炎となりて燃え上がるなり。 葵の上は源氏の正妻なれど、二人の仲は必ずしも睦まじか…

土佐光信「賢木」源氏物語絵アルバム第10帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

賢木(さかき)

榊葉の香をなつかしみもとめきて
神垣遠き野辺にまどふかな

六条御息所との別れ、藤壺の宮の出家、桐壺帝の崩御。別れと喪失が重なり、源氏の世界が揺らぎ始める第十帖。