アーカイブ: 源氏物語
蜻蛉(かげろう)
ありと見て手にはとられず見ればまた
行方も知らず消えしかげろふ
行方も知らず消えしかげろふ
宇治川に姿を消した浮舟。薫は死を信じつつ確信を持てず、蜻蛉のやうに実体のない疑問が胸に漂ふ。匂宮も深い悲しみに沈む。見えてゐるやうで見えない、存在の儚さを詠む帖。
夢浮橋(ゆめのうきはし)
夢の世を渡る浮橋とだえして
峰にわかるる横雲の空
峰にわかるる横雲の空
出家した浮舟は薫の使ひにも沈黙で応へ、過去のすべてを拒絶する。源氏物語全五十四帖の最終章は、答へのない問ひを霧の中に残したまま、突然に筆を置く。結末なき結末が問ふ、夢のやうなこの世の意味。