アーカイブ: 源氏物語

土佐光信「浮舟」源氏物語絵アルバム第51帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

浮舟(うきふね)

身を投げんと思ふ心はなくなりぬ
消えなむとこそ思ひなりぬれ

薫と匂宮の板挟みに苦しみ、宇治川への入水を決意する浮舟。千年を超えて読者の心を揺さぶる第五十一帖。

土佐光信「浮舟」源氏物語絵アルバム第51帖(蜻蛉帖に流用)、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

蜻蛉(かげろう)

ありと見て手にはとられず見ればまた
行方も知らず消えしかげろふ

宇治川に姿を消した浮舟。薫は死を信じつつ確信を持てず、蜻蛉のやうに実体のない疑問が胸に漂ふ。匂宮も深い悲しみに沈む。見えてゐるやうで見えない、存在の儚さを詠む帖。

土佐光信「手習」源氏物語絵アルバム第53帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

手習(てならい)

身を捨てて思ひもいれぬ山里に
つれなく澄める秋の夜の月

出家を果たし、薫の訪問さへも拒む浮舟の静かな再生を描く第五十三帖。自分の意志で人生を選ぶ、千年前の女性の物語。

夢浮橋(ゆめのうきはし)

夢の世を渡る浮橋とだえして
峰にわかるる横雲の空

出家した浮舟は薫の使ひにも沈黙で応へ、過去のすべてを拒絶する。源氏物語全五十四帖の最終章は、答へのない問ひを霧の中に残したまま、突然に筆を置く。結末なき結末が問ふ、夢のやうなこの世の意味。