蜻蛉(かげろう)
ありと見て手にはとられず見ればまた
行方も知らず消えしかげろふ
行方も知らず消えしかげろふ
宇治川に姿を消した浮舟。薫は死を信じつつ確信を持てず、蜻蛉のやうに実体のない疑問が胸に漂ふ。匂宮も深い悲しみに沈む。見えてゐるやうで見えない、存在の儚さを詠む帖。
千年の時を超えて語り継がれる
源氏物語と平安の雅
宇治川に姿を消した浮舟。薫は死を信じつつ確信を持てず、蜻蛉のやうに実体のない疑問が胸に漂ふ。匂宮も深い悲しみに沈む。見えてゐるやうで見えない、存在の儚さを詠む帖。
浮舟が本格的に登場する。身分の低い母の元で育ちながら美しく聡明な浮舟を、薫は深く愛するやうになる。薫と匂宮、ふたりの貴公子の間で揺れる浮舟の宿命が幕を開ける。
都に出た中の君は匂宮の妻として落ち着くが、匂宮の多情が悩みの種。薫は中の君に大君の面影を重ね続ける。そして中の君から大君の異父妹・浮舟の存在を知り、運命の歯車が動き始める。
彰子さまのそばに仕へてより、幾度かの季節が移りぬ。その御方の御心の深さのことを、わたくしは折にふれて思ふことにてさぶらふ。 中宮さまはとかく御言葉の少ない御方にてさぶらふ。女房たちの中には、中宮さまを御内気な御方と申す者…
和泉式部といふ方のことを、わたくしはいつも複雑な心持ちで思ひぬ。 その御方の歌の才は、疑ひやうもなく天性のものにてさぶらふ。詠む端から言葉が情念と結びつき、読む者の胸へまっすぐに飛び込んでくるやうなお歌にてさぶらふ。かか…
女房たちのなかに、赤染衛門さまといふ方がをられぬ。歳はわたくしよりもはるかに上にておはしまするが、その御歌のたたずまひのいかに品よく、落ち着きたることか。 赤染衛門さまは派手に才を見せびらかすといふことがなく、それでゐて…