アーカイブ: 源氏物語

土佐光信「真木柱」源氏物語絵アルバム第31帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

真木柱(まきばしら)

真木柱心やゆかむいかならむ
のちの世までの形見ともみよ

髭黒の大将が玉鬘を強引に妻にしてしまふ。嫉妬のあまり狂乱した髭黒の正妻は実家へ去り、幼い娘・真木柱は別れを惜しんで柱に歌を刻みつける。玉鬘の幸福と、捨てられた正妻の哀れが交錯する。

土佐光信「梅枝」源氏物語絵アルバム第32帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

梅枝(うめがえ)

春ごとに花の盛りは来たれども
あひみん事はいつを待つべき

六条院の春、薫物合わせが催され若君たちが技を競ふ。明石の姫君の入内準備が進む中、源氏は娘の輝かしい門出を喜びつつも、別れを惜しむ。梅の香が漂ふ春の帖。

土佐光信「藤裏葉」源氏物語絵アルバム第33帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

藤裏葉(ふじのうらば)

見てもまた逢ふ夜まれなる夢の内に
やがて消えにし影を惜しまん

冷泉帝の行幸を六条院に迎へ、源氏は准太上天皇の位を授けられる。夕霧と雲居雁の結婚も成就し、源氏の栄華は絶頂に達する。物語の第一部が幕を閉じる、晴れやかな帖。

土佐光信「若菜上」源氏物語絵アルバム第34帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

若菜上(わかなじょう)

君がため春の野に出でて若菜摘む
わが衣手に雪は降りつつ

源氏の栄光の絶頂と、そこから始まる静かな悲劇の転換点。女三の宮の降嫁が紫の上に深い傷を与へる第三十四帖。

土佐光信「若菜下」源氏物語絵アルバム第35帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

若菜下(わかなげ)

命あらばまたも見てまし心ざし
深き春とも知らずやあるらん

柏木が女三の宮に密通し、薫が生まれる。源氏はその秘密を知り、若き日に継母・藤壺に犯した罪の報いを感じる。紫の上が重く病み、源氏の胸に初めての老いと喪失の予感が訪れる。

源氏物語絵巻 柏木 ─ 徳川美術館蔵(12世紀)

柏木(かしわぎ)

もの思ふと過ぐる月日も知らぬ間に
年もわが世も今や尽きぬる

頭中将の息子・柏木が源氏の妻・女三の宮に恋し禁忌を犯す。業の連鎖と因果応報を描いた悲劇の一帖。若くして命を燃やし尽くした柏木と、過去の自らの罪を鏡に映すように見る源氏の苦悩。

土佐光信「横笛」源氏物語絵アルバム第37帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

横笛(よこぶえ)

横笛のしらべはことに変はらぬを
むなしき音のなほや響くらむ

女三の宮との密通の罪悪感から命を落とした柏木。彼の形見の横笛が夕霧に渡り、夕霧の夢枕に柏木の魂が立つ。笛の音が亡き友の声となって響き、生者と死者の間を漂ふ帖。

土佐光信「鈴虫」源氏物語絵アルバム第38帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

鈴虫(すずむし)

鈴虫の声のかぎりを尽くしても
長き夜あかず降る涙かな

出家した女三の宮のために源氏が仏事を催す秋の夜。鈴虫の声が庭に満ちる中、冷泉院や蛍宮が集まり管弦を楽しむ。源氏は宗教と愛の間で揺れる複雑な心情を歌に込める。

土佐光信「夕霧」源氏物語絵アルバム第39帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

夕霧(ゆうぎり)

おほかたの秋の霧とも見えなくに
たつた山なる松の下露

源氏の息子・夕霧が落葉の宮へ向ける一途な恋と、それが生む悲劇を描く第三十九帖。父とは異なる愛の形。

土佐光信「御法」源氏物語絵アルバム第40帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

御法(みのり)

おくと見るほどぞはかなきともすれば
風に乱るる荻の上露

病の中で法華経を写し仏道に帰依した紫の上が、秋風の中で静かに息を引き取る。源氏の最愛の人の死。この帖は源氏物語最高の名場面のひとつとして、千年を超えて読み継がれてきた。