アーカイブ: 源氏物語

土佐光信「幻」源氏物語絵アルバム第41帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

幻(まぼろし)

見てもまたまたも見まほし難波潟
蘆の若葉のいとど茂れば

紫の上を失った源氏が静かに消えてゆく、源氏物語正編の最終帖。語られない死が、最大の悲哀を生む第四十一帖。

土佐光信「匂宮」源氏物語絵アルバム第42帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

匂宮(においみや)

八重葎しげれる宿のさびしきに
人こそ見えね秋は来にけり

源氏の死後、次世代を担ふ薫と匂宮が登場する。薫の身体から不思議な香りが漂ひ、匂宮は美貌と多情で名を馳せる。宇治十帖への橋渡しとなる序章的な帖。

土佐光信「紅梅」源氏物語絵アルバム第43帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

紅梅(こうばい)

紅の花ぞあやなく見ゆるかな
春の霞の晴れ間なければ

亡き柏木の弟・紅梅の大納言が主役。母方の違ふ子どもたちへの求婚者として薫や匂宮が絡む。春の紅梅が美しく咲く中、次世代の恋の予感が漂ふ短篇的な帖。

土佐光信「竹河」源氏物語絵アルバム第44帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

竹河(たけかわ)

竹河の橋うちわたし君を見む
日をこそいへど暮れぬけるかな

玉鬘の娘たちをめぐる恋の物語。薫が玉鬘の娘・大君に心を寄せ、匂宮も絡む。玉鬘の長女は東宮の妃となり輝かしい立身を遂げる。戦略的な母・玉鬘の姿が印象的な帖。

源氏物語絵巻 橋姫 ─ 五島美術館蔵(12世紀)

橋姫(はしひめ)

秋の夜の月も宇治川もかはらずて
いく世過ぎぬる浮木なるらん

宇治十帖の幕開けとなる一帖。霧深い宇治の里に隠棲する八の宮と二人の姫君、そして訪ねてくる薫。源氏の華やかな時代が終わり、孤独と無常が漂う宇治の世界が幕を開ける。

土佐光信「椎本」源氏物語絵アルバム第46帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

椎本(しいがもと)

橘の薫るあたりをよそにみて
すぎうかりけるつまき刈りかな

薫が宇治の八宮の山荘へ通ひ続け、大君・中の君への敬愛を深める。八宮は仏道に専心する高潔な人で、薫の魂の師でもある。椎の木の根のやうな、静かで揺るがぬ縁が結ばれる。

土佐光信「総角」源氏物語絵アルバム第47帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

総角(あげまき)

結ぼほれ絶えぬ心のあげまきに
長き契りを神やしるらん

薫が大君への深い愛を訴へるが、大君は固く結婚を拒み、代はりに中の君を匂宮と結ばせる。八宮が逝き、姉妹は宇治に取り残される。大君は心の傷から病を得てこの世を去る。

土佐光信「早蕨」源氏物語絵アルバム第48帖、アーサー・M・サックラー美術館所蔵(1509-1510年)

早蕨(さわらび)

摘みにとて野辺にはいでじ山里の
早蕨のみぞ春を告ぐなる

大君の死後、春の訪れとともに中の君は匂宮に引き取られ都へ向かふ。薫は大君の面影を中の君に重ねながら宇治に別れを告げる。早蕨のやうな新しい命の芽吹きと、残された悲しみが交差する帖。

土佐光信「宿木」源氏物語絵アルバム第49帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

宿木(やどりぎ)

宿り木と思ひいづれば橘の
にほふあたりに立ちやすらはん

都に出た中の君は匂宮の妻として落ち着くが、匂宮の多情が悩みの種。薫は中の君に大君の面影を重ね続ける。そして中の君から大君の異父妹・浮舟の存在を知り、運命の歯車が動き始める。

土佐光信「東屋」源氏物語絵アルバム第50帖、ハーバード美術館所蔵(1509-1510年)

東屋(あずまや)

東屋のまやのあまりの雨そそぎ
我をぬらすとは人に告げこそ

浮舟が本格的に登場する。身分の低い母の元で育ちながら美しく聡明な浮舟を、薫は深く愛するやうになる。薫と匂宮、ふたりの貴公子の間で揺れる浮舟の宿命が幕を開ける。