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式部日記

皐月 さつき

卯の花くたし、雨しとどに降る

紫式部日記絵巻(藤田美術館蔵)国宝、鎌倉時代
卯月(うづき)・穀雨(こくう)

清少納言のこと ── 才といふものについて

世をうみの海人の塩焼くけぶりをば たち離れてぞながめやるべき

清少納言こそ、したり顔にいみじうはべりける人と思ふに、かくも彼女のことを書きつけるは、我ながら不思議なことにさぶらふ。 彼女はさかしらに漢字をも書き散らし、よく見れば何ほどのこともなき節々も多かりき、と世の人は言ひぬ。さ…

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紫式部日記絵巻 第一段(五島美術館蔵)国宝、鎌倉時代
卯月(うづき)・穀雨(こくう)

「若紫はさぶらふか」 ── 殿との問答

知られじな年経て今は白波の 跡なき浦に寄るとも告げじ

ある夜、局にてひとり物語の続きを書きつけてをりしに、御簾の外より声がかかりぬ。 「若紫はさぶらふか」 殿・道長さまのお声にさぶらひぬ。わたくしは筆を止めて、少し間を置きてより、御簾越しにお答へ申しあげぬ。「さやうの方はこ…

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彰子中宮と敦成親王 - 紫式部日記絵巻より(国宝、鎌倉時代)
卯月(うづき)・穀雨(こくう)

敦成親王の御誕生 ── 寛弘五年秋の夜

この世には影も隠ろふ雲なけれ 月のみかはは空にすめりや

寛弘五年、長月十一日の夜のことにさぶらふ。 中宮彰子さまが御産気づかせたまひてより、土御門の邸の内はにはかに騒がしくなりぬ。殿上人も女房も、皆息をつめてをりぬ。読経の声が絶えず、香の煙が御帳の内より漂ひ出でて、わたくしの…

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曙色の空にたなびく紫雲と山際の風景
如月(きさらぎ)・雨水(うすい)

春はあけぼの ─ 山際の曙に筆を置きて

春はあけぼの やうやう白くなりゆく 山際すこし明かりて 紫だち…

源氏の物語を綴る夜半、ふと御簾を上げれば、東の山際がやうやう白くなりゆく。紫だちたる雲のたなびく曙の空に、しばし筆を忘れて見入りぬ。

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源氏物語絵巻 - 宿木
如月(きさらぎ)・雨水(うすい)

雪の朝の文

降る雪に空も地もなく白妙の 衣かさねて春を待つかな

夜の間に降りたる雪、朝になりて見れば、庭一面を白く覆ひつくしてをりぬ。築山も松の枝も、すべて白き衣をまとひたるがごとし。 かやうな朝は、いつもより早う目覚めぬ。御所の女房たちもまだ起き出でぬ頃、ひとり縁に出でて雪景色を眺…

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源氏物語絵巻 - 東屋
如月(きさらぎ)・雨水(うすい)

中宮さまの御前にて

散ることを誰に語らむ山桜 風よりほかに訪ふ人もなし

今日は中宮彰子さまの御前にて、物語のことを語り合ひぬ。 中宮さまは、わが書きたる物語をいたうお気に召したまひて、「続きはまだか」と催促したまふ。かたじけなきことにて、筆の進まぬ日もあれど、中宮さまの御期待に応へまつらんと…

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紫式部日記絵巻(藤田美術館蔵)
如月(きさらぎ)・雨水(うすい)

秋の月に思ふこと

めぐりあひて見しやそれとも分かぬ間に 雲がくれにし夜半の月…

寛弘五年、長月の十五夜なり。中宮さまの御所にて、女房たちと月を眺めてをりぬ。 今宵の月のいと明かきこと、まことに言の葉にも尽くしがたし。庭の白砂に映りたる月影は、さながら水面のごとく揺らめきて、虫の音ばかりが静けさを際立…

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